2020年1月に発刊された「100万人が信頼した脳科学者の 絶対に賢い子になる子育てバイブル 」(ダイヤモンド社)を読みました。
妊娠期の胎児を含む0歳から5歳の脳の発達を中心に、「賢い子」を育てる方法を指南した本書。
現時点の科学的なエビデンスに基づいて俗説や通説を否定し、子どもの脳の発達にとって本当に良い環境作りや接し方について解説しています。
小見出しには「『5歳まで』の子育てが人生を大きく左右する」等の文言が踊るため、若干「3歳児神話」系の思想が漂うものではありますが、「5歳までにXXしないと高い知能が育ちませんよー」ということではありません。
本書の半分近くは親の接し方による感情面や情緒面の発達に割かれており、年齢問わず、取り入れるべき点があるのではないかと思い、その辺りを中心にご紹介します。
本書の詳細内容はこちらから情緒や人間関係の安定した子が「賢く幸せな子」
測定可能な「賢さ」や学歴が、社会において強力な「錯覚資産」(※)を形成することは経験上認識していますが、多くの人から支持され持ち上げられていく人は、自分を含む人間の感情を扱う能力が安定しているなーと感じます。
ある程度優秀であることは前提として、その集団の中でずば抜けた能力がなくても、全方位的に安定して好かれる人、支持される人は、気づけば静かに、でも着実に、出世していたりする。
個人としてどれだけ頭が良くても、一人だけで出来ることには限界があり、結局他人をポジティブに巻き込んで物事を進めていけないと、仕事をスケールして大きな成果をあげられないからというのもあると思います。
この本でも、表情や仕草など非言語のシグナルから相手の本心を読み取れる子供は成功するということが書かかれています。
また、心理学者のジョージ・ヴァイラントが70年以上に渡り率いた「幸せの要因」に関する研究が、「人生においてほんとうにたいせつな唯一のことは、他者との人間関係です」(p. 230)と結論付けたことに言及。
親が導いた人生に子どもが胸をときめかせて生きるためには、なにも億万長者になる必要はない。衣食住の基盤を確保できれば、あとは親しい友人や親戚が何人かいれば良い
(「100万人が信頼した脳科学者の 絶対に賢い子になる子育てバイブル」(ジョン・メディナ (著), 栗木 さつき (翻訳)、ダイアモンド社), p.232)
情緒や人間関係の安定した人になることこそが、人生の基礎になるのだと思います。
「錯覚資産」:ふろむだ氏が著書『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』で提唱する、「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」及び、それを引き起こす事実(例:名門大学卒業の人が、その属性に引きずられてその人に関するその他の属性もよく見えてしまう、等)
夫婦ゲンカの後は子どもの前で仲直り
では、感情面や情緒面で「賢い」子どもを育てるためには、どのような環境を整えれば良いのでしょうか。
この本で強調されていることの中で、私が取り入れることにしたのは、「夫婦ゲンカをしたら、子どもの前で仲直りすること」。
夫婦仲が子どもの情緒的な発達に影響を及ぼすことは感覚的にも理解出来ることだと思いますが、本書によると、それ以上に、「夫婦が仲直りをする現場を見せないほうが、子どもに大きいダメージを与える」のだそうです。
研究によると、かなり多くの割合の夫婦において、子供が出来ると仲が悪くなるそうですが、それを左右するのは出産前の準備と覚悟だと言います。
うちは予期せぬ妊娠ではありましたが、出産までには色々な本を夫婦で読み、出産が夫婦仲にもたらす影響について、ある程度心の準備が出来ていたように思います。
そのおかげか、出産後の夫婦関係は特に変化も問題もなく、むしろ結束力が強まった気がします。特に夫は、夫として気を付けるべき点について書かれた本を読み、出産直後はそこでのアドバイスに従って行動していたようでした、笑。
ただ、夫婦ゲンカをすることはあります。
2歳の娘が最近、「パパとママ、なんで喧嘩するの?」と言いだし、ドキッとしました。
そのときは喧嘩というより、少し強めの口調で会話していただけだったのですが、以降、子どもの前での夫婦の会話は語気と表情に少し気を使い、「ケンカしてないよ」アピールしています。また、少しケンカっぽくなった後は、子どもの前で「パパごめんね」「ママごめんね」等のやりとりを心がけています。
結果ではなくプロセスを褒める
子育てにおける私の願いは、自己肯定感を醸成することです。
最近では、その重要性が当たり前のこととして語られるようになっていますが、私自身は自己肯定感が低いという自覚があり、人生においてその弊害を常に感じます。同時に、職場等で遭遇する自己肯定感の高い人の人生を見ていると、その重要性を認めざるを得ません。
ただ、どうすれば自己肯定感を育てられるのかは、わかるようで、実践出来ているかというと、自信が持てません。
よく「褒めて育てる」と言いますが、マイナス面ではなくプラス面に着目してコメントする、というようなことは分かるものの、「具体的には何に対して褒めれば良いの?」「どのように褒めれば良いの?」「そもそも、やたら褒めて良いの?」という疑問が常にどこかにあります。
この本では、褒め方に関して、「お前は頭がいいね」等という結果や状態について褒めるのではなく、努力やプロセスについて褒めるべきと書かれています。結果や状態について褒めると、努力をしなくなったり、うまくいかない時に原因を追求し改善しようとする姿勢が身につかないからだそうです。
これ自体は他でも聞いたことのあるような内容ですが、実践するのは案外難しいですよね。
例えば今、我が家ではトイレトレーニングの真っ最中ですが、「自分でトイレに行けた」とか「トイレに座れた」ということ以上に、「実際におしっこが出た」ということを褒めがちだなーと思います。
感情の「ラベリング」を促すことで落ち着きのある子どもになる
さて、それでは肝心の、感情そのものを扱う力を、どのように育めば良いのでしょうか?
本書では、幼児期から親が子どもに対して「感情のラベリング」を手伝うことを推奨しています。
感情のラベリングとは、今感じている気分を、嫌悪感、悲しみ、悔しさ等の言葉で分類し表現することです。
あなたが子どもの感情にどう対処するーー子どもの感情を察し、それに対応し、励まし、感情のコントロールについて助言するーーかが、赤ちゃんの将来の幸福度を左右する最も大きな要因となるのだ
(「100万人が信頼した脳科学者の 絶対に賢い子になる子育てバイブル」(ジョン・メディナ (著), 栗木 さつき (翻訳)、ダイアモンド社), p.283)
感情を言葉で表現すると、子どもの神経系を鎮める効果があるのだ
(「100万人が信頼した脳科学者の 絶対に賢い子になる子育てバイブル」(ジョン・メディナ (著), 栗木 さつき (翻訳)、ダイアモンド社), p.297)
本書によると、子どもは感情の反応を生理的な特徴として捉えますが、なんと呼べば良いのかわからないため怖くなり、癇癪をおこし悪循環に陥ります。その際、感情を言葉で分類し、ラベリングする力を身につけると、自分の感情を客観視し、次第にコントロールできるようになるということです。
そして親は、まずは子どもの感情を受け止め、共感し、否定しないことが重要とのこと(これは一般的によく言われていることかと思います)。
本書では、例えば、飼っていた金魚が死んでしまい悲しむ子どもに対し、「ただの魚だから大したことはない」等といって状況を矮小化したり、「また新しい金魚を買ってこよう」等と代替案を提示することは、子どもの気持ちを完全に無視する例として挙げられています。
然るべき場面で一貫して共感を示すことは、必要だとわかっていても、案外難しいなと感じます。
子どもの感情的な要求に対して、声のトーンは落ち着いていたとしても「今出来ないから後でね」等とぶっきらぼうに接したり、話を逸らそうとしてみたり。
全てのやりとりがそうでなくても良く、「わが子とやりとりの30%に共感がこめられていれば、幸せな子どもを育てられる」と書かれていますが、30%ですら、案外大きいような気もします…。
まとめ
本書は他にも、「2歳まではテレビを見せるべきでないこと」や「言語学習においてDVDに効果がないこと」などなど、私も含む多くの親がドキっとするような指摘が、科学的根拠とともに主張されています。
理想的とわかっていても実践することが難しい提案もありますが(2歳までテレビを見せない、等)、子どもの共感力や情緒の安定につながる親の接し方次第に関するヒントが詰まっており、一読の価値ありです。