【読書】《まず読んでほしい》家族の幸福感を最大化する家計管理 – 「正しい家計管理」を読んで

これまでに読んだことのある家計に関する本の中で、最も心を動かされた一冊です。

この本は、「家計簿」のつけ方に関するハウツー本ではなく、「家計管理」の哲学と実践を説く本です。

著者はFPではなく、企業の管理会計を専門にする会計士です。『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』等のベストセラーを書かれています。本書は、企業経営と家計運営には共通点が多いにもかかわらず、一般的な家計管理が企業経営とかけ離れた手法で行われている点に違和感を感じ執筆されています。

この本の最大の特徴は、家計管理の具体的なノウハウ以前に、(他人の評価や世間体ではなく)自分の価値観やお金の使い方を家計管理に反映し、自分が幸せになれる仕組みを設計することの重要性を説いている点です。

本来、幸せのあり方は個人や家族によって違い、どのようなことに、どれくらいのお金をかけるべきかの答えはひとつではないはず。

にもかかわらず、多くの家計管理本やFPによる記事では、「住居費は収入の25%まで」や「食費は4人家族で月々5万円を目安に」など、標準的なケースを踏まえた節約や予算管理ノウハウに終始しています。

これでは、お金を管理するうちに、気付けばお金(を得る&増やすこと)が目的化しかねません(実際、そうなっている人は多いと思います)。

本書はそうではなく、自分や家族にとって、なぜ・どれくらいのお金が必要か、という「そもそも」論に立ち返り、本当の意味での家族の価値観を家計管理に反映させることで、限られた資源を使って人生の満足感・幸福感を最大化する考え方を提示しています。順序が逆なんですね。

家計管理の具体的なノウハウを勉強する前に、まず読みたい一冊です。

目次

自分と家族の「人生の北極星」を見つめ「価値あるお金の使い方」を考える

本書が大前提とする考え方は、収入の多寡に関わらず、健全な会計管理=やりたいことにお金を使いながら、家庭を「倒産」させないことです。

そのため、いかに毎日節約をするかではなく、お金を使う際の判断基準を持ち、短期・中期・長期的に予算管理に反映させるかを重視しています。

家族が求める「価値」を定義する
家計管理の目的は、ひとつです。
自分と家族が、現在も未来も幸せに暮らすこと。
お金はその幸せな生活を実現するための重要なツールです。しかし、幸せそのものではありません。だから、預金は目的ではないのです。
自分と家族が価値をおいているものは何か。どうなれば幸せなのか。
それを定義するのが、家計管理の最初の一歩です。
(中略)
価値観をお金の流れという形で表した「家計」は、迷ったときに立ち戻れるガイドラインとして、機能するようになります。

正しい家計管理 (p.11 – p.12, 林 總, WAVE出版)

また、上記のような価値観を反映させた長期的な予算計画を、筆者は「人生の北極星」と呼び、常にそこを目指し、そこに立ち返って支出の調整を行うように指南しています。

自分や家族がどうありたいか、を起点に考えると、いつ・どのくらいのお金が必要なのか、具体的な見通しが立てやすくなり、優先順位もつけやすくなる上、満足度が高まります

「生活レベルを決めるのは世間ではなく自分と家族」

経済的に少しでも余裕が出てくると、ついついワンランク上のものに手を出したくなるのが多くの人間の性ではないでしょうか。

筆者は、多くの支出には「世間の常識」や見栄が多分に介在していて、本当に心から望んでいるものなのかと問いかけます。

私も20代後半の独身時代に大きく収入が上がったとき、毎月高級旅館・ホテルに宿泊したり、高い洋服を買うようになったり(迷ったら全部買う等)、急に生活水準を上げた時期がありました

当時は若く、おしゃれがしたい、高級な食事が食べたい、ハイエンドな経験がしてみたい、と、消費欲が爆発していた時期でもありました。

結婚・出産を機に、自由に使える時間やお金が減り、将来への備えも必要になったことから、独身時代のようなお金の使い方が出来なくなり、当初は強いストレスを感じたものです。

しかし、本当に必要なものや自分を満たしてくれる「贅沢」は、頻度こそ減らしたものの完全に辞めることはしませんでした。その代わり、「何となく」消費していたもの(頻繁なスタバの利用等)や過剰なもの(ほとんど着る機会のなさそうな高額な洋服等)は完全に排除しました。結果、消費は減ったのに、満足度は一定か微増し、余剰資金も増えているんですよね。

「毎月一円でも純資産を増やす」ことの出来る仕組みを作る

ここまで本書が提示する「考え方」にフォーカスしてご紹介しましたが、本の中では、筆者が提唱する会計管理の具体的な実践方法が、ツールも含めてかなり詳細に記載されています

その詳細な実践方法については、是非本書を読んでいただくとして、私自身がとても大事だと考えるのは、家計の状態をキャッシュ・フローではなく、バランス・シートで評価する点です。

本書で繰り返し掲げられる家計の「目指す姿」は、「毎月一円でも良いから純資産を増やすこと」です。

純資産とはつまり、預貯金・株等の金融資産や住宅等の有形資産(推定評価額)を合計した資産から、住宅ローン等の負債を差し引いた金額です。

筆者は、まずはこれらを「見える化」し、純資産が増えるような支出の仕組みにすることが重要であると主張します。

その際、一般的な費目ありきで収支管理するのではなく、自分や家族がしたいことありきで、「幸せで満足感に満ちた記憶と共に振り返りたい」費目を設定することを勧めている点も、共感出来ます。

尚、筆者は投資に対する考え方は保守的で、あまり積極的な投資行為を推奨していません。

また、ローンはどんどん繰り上げ返済すべき、と書かれている点には、個人的にあまり賛成出来ませんでした(が、それはその時々の金利にもよるので、少なくとも今のような超低金利でローンを組んでいる場合は、必ずしも急いで返済しなくても良いのではと思います)。

まとめ:価値あるものにお金と時間を使えることが本当の幸せ

この本から得られることは、単なる家計管理のノウハウではなく、自分の人生の限られた時間とお金を使って、満足度・幸福感の高い人生を送るための考え方と仕組みの作り方です。

お金だけを見ていると、いくら収入や資産が増えても、何故か欠乏感が減らない(むしろ強まることもある)のは、やっぱり価値あるものに時間とお金を使えていない、納得感を得られていないからなんですよね。

家計管理の細かい手法は、この本を参考に個々人に合ったやり方があるのではと思います(我が家も参考にすれど厳密には自分なりにカスタマイズしている)。しかし、この本の考え方を実践することで、自分や家族の価値観を指針にお金と向き合えるようになることは確かです。

共働き家庭の家計管理についてもし指南されているので、是非ご一読ください。

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