【読書】「手づかみ食べ」は子どもの主体性を育てる-「子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか?」を読んで

読書

離乳食も後期になった生後10ヶ月前後。栄養や食育のためと、色々な食材を食べさせてはいたものの、相変わらず赤ちゃん用のスプーンやフォークで「あーん」としたり、手でぐちゃぐちゃと食べる様子に困惑したりと、「果たしてこんなやり方で良いのだろうか?」と、食事に関して漠然とした不安がありました。

そんなとき目に止まったのが本書でした。

最初は「食べさせ方」に関する興味から手に取った本でしたが、読み始めるとすぐに、「食べさせ方」を通して子どもの主体性を育むための考え方がこの本の本質であるとわかりました。

子どもの主体性や自尊心を育てることを最も重要だと感じていた私にとって、ページをめくるたびに胸に刺さる言葉やエピソードのオンパレードで、まさに良書との出会いとなったのでした。

手の指は「突き出た大脳」-「食べ方」を通じて人間の発達と成長を語る本

「子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか? 」(IDP新書) は、タイトル通り、子どもの「食べ方」をテーマにした新書です。

内容は、60年以上保育の世界に携わり、自らも埼玉県鴻巣市にあるどんぐり保育園とどんぐりっこ保育園を立ち上げ、初代園長として尽力されてこられた清水氏と、発達の専門家である山口氏との対談形式でまとめられています。この本は2016年9月に初版が発行されているが、2020年3月現在も、中古でもそれなりの価格で取引され、子育て世代への反響の大きさが感じられます。

著者によると、「手は突き出た脳」であり、「手づかみ食べは赤ちゃんの知的活動」だということです。

口をあーん、と開けて食べ物を入れてもらうのを待っているのは、決して主体的ではありませんよね。食べることは生きることと言われるように、食と向き合う姿勢はその人の生き方に反映されます。

「子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか? 」(山口平八 (著), 清水フサ子 (著), 和泉功 (編集)、IDP新書), p.24

(冒頭略)手の指は「突き出た大脳」と言われるくらい、脳の発達に大切な部分なのです。その指を使って食べるということは知的な発達につながりますから、時期がくればこぼさずきれいに食べられるようになります。

「子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか? 」(山口平八 (著), 清水フサ子 (著), 和泉功 (編集)、IDP新書), p.28

赤ちゃんの手づかみ食べは、まさに知的活動だと言ってもいいと思います。

「子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか? 」(山口平八 (著), 清水フサ子 (著), 和泉功 (編集)、IDP新書), p.29

「あーん」と育ててきた子は、大きくなってもお母さんや周りの人たちが手伝ってくれることをあてにしがちな子になります。物事に自分から積極的に挑戦する姿もあまり見せてくれなくなります。

「子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか? 」(山口平八 (著), 清水フサ子 (著), 和泉功 (編集)、IDP新書), p.39

また、この本では、親の愛情のあり方に対しても一石を投じています。

清水氏は、「その頃の子どもの心に芽生えてきている『自分でやりたい』と言う自我を大切にして、「散らかるけど、私が片付けるからうんとおやり」と言って育ててあげようと言うのが本当の愛情だと思う」(p. 39)と、投げかけています。この姿勢、食事だけでなく、常に忘れちゃいけないなーと重く受け止めました。

「そんなつもりはないけど、ついつい先回りして色々やりすぎてしまっているのではないか。」「『まだ赤ちゃんだから』と思っているけど、実は自分が思うよりも子どもはずっと成長していて、主体性の芽を知らないうちに摘んでしまっていたのではないか。」

と、自分の接し方を改めて見直すきっかけになりました。

一人の人間として仕事を持つ母親に寄り添ってくれる

著者の一人である清水氏も、働きながら子どもを育てて来られました。

この本の冒頭には、そんな清水氏の保育士としての原点となったエピソードが紹介されています。

そのエピソードを読むと、女性が1人の人間として仕事を持ち生きていくことの重要性を清水氏が認識し、仕事を持つ母親に心から寄り添う姿が伝わって来ます。私はこのエピソードを読み、私の母親(同じく乳幼児期から私を預けて専門職に従事)や現在の私自身を重ね、ほろりと涙を流してしまうほどでした…。

働く母親は皆、毎日、もっと子どもに手をかけたい気持ちと仕事との間で揺れ動いていると思います。毎日、毎時間、状況に応じて、「何を優先すべきか」の判断を繰り返していると思います。

母親としての自分に目を向けると、やってあげたいこと、できていないことが山積みのように見えます。まさに今、人生の基礎を作ろうとしている子どもを抱えながら、自分自身のキャリアも重視していることに、ともすれば罪悪感さえ感じることもあるでしょう。

この本がじゅわ~と胸にしみる背景には、そんな、母親の一人の人間としての充実感を大事にする価値観を丸ごと抱きしめ、子どもの主体性を育てるための本質的な考え方を提供してくれていることがあるのではないでしょうか。

「手づかみ食べ」の実践で母娘の夕飯がハッピーに

この本の教えを参考に、実際、1歳前後のときうちでも茹でただけのスティック野菜をあげていました。娘は喜んで自分からつまみ、もりもり食べていました。特に人参は、一本くらいならペロっと食べていました。大根や玉ねぎも好んで食べていました。

栄養面で安心なだけでなく、食事の支度も楽なのでとても助かりました。

スティック野菜以外も、手で意欲的に食べていました。

確かに、スティック野菜等ではなく、ペースト状のものやスープ状のものを手づかみにすると手が汚れるし、周りにも飛び散りやすいです。それでも、「主体性」と「愛情」の話を思い出し、手づかみ食べをしたいときは存分にそうさせるようにしました。そうするととても楽しそうに食べました。

食具への移行についても具体的に指南されている

この本では、「手づかみ食べ」だけを取り上げるのではなく、お箸等の食具への移行方法やその時期についても書かれています。その上で、行きすぎた幼児教育やお箸の使い方等を含む「訓練的」な育て方が、子どもの主体性の芽を摘むと警鐘を鳴らしています。(うちはうっかり、この本では良くないとされている訓練用のお箸を導入していることに、最近気付きましたが…)

食具の取り入れ方や時期、しつけについての考え方は人それぞれあると思います。いくら「愛情」とはいえ、「手づかみ食べ」で散らかった後の片付けが、共働きで忙しい親の過剰な負担になるのであれば、個々の家庭にとって最も適した方法で、主体性を育む食事ができればいいのかな、と思います。

まとめ

「何を食べさせるか」については、一般の育児書を始め情報があふれています。しかし、「どう食べさせるか」について、これほど丁寧かつ愛情深く解説された情報はあまりないのではないかと思います。

この本を読んで、手づかみ食べの重要性は食への意欲の開花だけではなく、あらゆる物事への自発的な関心と、それらに対する積極的な姿勢の育成につながることだと理解できました。子どもの主体性を育てたい親にとっては、離乳食期を終えても大切にしたい考え方が詰まっていると、実際、大人とほぼ同じ食事になった今でも感じます。

乳幼児を持つ多くの親に読んでもらいたい良書です。

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